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代表取締役 田中 慎也

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2026.07.21

心の向く方向はどこか?

こんにちは。 おかげさまで創業77年。
長野に暮らす、長野と暮らす。
田中建築株式会社  代表の田中慎也です。

私たちは、「この地とともに、暮らしにぬくもりを紡ぐ」という設計コンセプトとして掲げています。

もちろん、この考え方は突然生まれたものではありません。これまで多くのお客様と家づくりに携わる中で少しずつ形になってきたものですが、その想いを言葉として整理する大きなきっかけとなった一冊があります。この本との出会いが、設計の原点を見つめ直すきっかけになりました。
それが、建築家・堀部安嗣さんの著書『建築と利他』です。
建築という仕事を改めて見つめ直す中で、私自身、とても深く心に残った言葉がいくつもありました。

「建築の99%は配置計画で決まる」という言葉

特に印象的だったのが、「建築の99%は配置計画で決まる」という考え方です。

家づくりというと、多くの方は間取りやデザイン、設備に目が向きます。しかし実際には、その建物を敷地のどこに置き、どの方向を向き、庭や道路、隣家、山並みや空との関係をどうつくるか。その配置によって、暮らしの質は大きく変わります。
長野という地域は、四季の移ろいが豊かで、山々の景色や風の流れ、太陽の光など、自然環境そのものが暮らしの一部です。
だからこそ私は、建物単体ではなく、「この土地だからこそ生まれる暮らし」を設計したいと考えています。
「この地とともに」という言葉には、そんな想いを込めています。

視覚を制限すると、心の扉が開く

もう一つ、強く共感した言葉があります。
「視覚を制限すると、心の扉が開く」

現代は情報があふれています。家の中からも道路や隣家、電柱や駐車場など、多くの情報が無意識に目に入ってきます。だからこそ、すべてを見せるのではなく、本当に見たい景色だけを切り取ることが大切なのだと思います。余計なものを隠し、空や木々、庭の緑、季節の光だけが自然と目に入る。
そんな空間では、不思議と気持ちが落ち着き、家族との時間や自分自身と向き合う時間が豊かになります。
設計とは、壁や屋根をつくることではなく、そこで過ごす人の心の居場所をつくることなのだと、改めて感じました。

窓は建築の命

もう一つは「窓は建築の命」という考え方です。

私は以前から窓はとても大切だと考えていましたが、この言葉によって、その意味をさらに深く理解できた気がします。窓は光を取り込むためだけのものではありません。風を通し、季節を感じ、景色を切り取り、時間の移ろいを教えてくれる存在です。

朝日が差し込む窓。夕焼けを眺める窓。庭の木々が四季によって表情を変える窓。

その一つひとつが、住まいの豊かさを育ててくれます。だから私たちは、窓の大きさや位置を決める際にも、「どんな景色を暮らしの中に取り込むのか」を大切にしています。

建築は、人と地域をつなぐもの

『建築と利他』を読み終えたあと、改めて自分たちの家づくりを振り返ると、「この地とともに、暮らしにぬくもりを紡ぐ」という言葉は、私たちがこれまで大切にしてきたことを、そのまま表しているのだと感じました。
建物は完成した瞬間がゴールではありません。
その家で暮らすご家族が、地域の風景や自然とともに年月を重ね、日々の暮らしの中で心地よさを感じ続けられること。それこそが、本当に価値のある住まいだと私は考えています。

これからも、一棟一棟、その土地と丁寧に向き合い、その場所だからこそ生まれる暮らしを設計していきたいと思います。


参考図書

堀部安嗣『建築と利他』(平凡社)

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