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代表取締役 田中 慎也

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2026.08.10

家の予算を決めるとき、住宅ローンの借入可能額を信じてはいけない理由

こんにちは。
「長野に暮らす、長野と暮らす。」
田中建築株式会社 代表の田中慎也です。

家づくりの相談をしていると、最初の段階でよく聞く言葉があります。
「銀行に相談したら、5000万円くらいまで借りられると言われました」

住宅ローンの事前審査をすると、「これくらいまでなら融資できます」という借入可能額が出てきます。
すると、その金額を見て、「5000万円借りられるなら、5000万円の家を建てても大丈夫なんだ」と思ってしまう方もいらっしゃいます。

通常、借入可能額はご年収の35%と言われています。例えば、ご年収が600万円の方であれば年間210万円まで返せる能力があると判断されます。月に直すと17.5万円になります。

ここで「あれ?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか? そうです。月17.5万円という返済はかなり大変なのではないでしょうか?

銀行が貸してくれる金額と、そのご家族が安心して返していける金額は、まったく別のものだからです。
今回は、家づくりで後悔しないために、住宅ローンと予算についてお話ししたいと思います。

「借りられる金額」と「返せる金額」は違う

住宅ローンには審査があります。年収や年齢、勤務状況、ほかの借入状況など、さまざまな条件をもとに金融機関が融資できる金額を判断します。その判断材料のひとつが「返済負担率」です。返済負担率とは、簡単に言えば、年収に対してローンの年間返済額がどのくらいを占めるのかを見る数字です。

たとえば【フラット35】では、すべての借入れについて、年収に占める年間合計返済額の割合を、年収400万円未満の場合は30%以下、400万円以上の場合は35%以下とする基準が設けられています。

ただし、ここで大切なのは、これは「ここまで借りても生活に余裕があります」という基準ではないということです。

あくまでも住宅ローンを利用するための基準です。家計の中には住宅ローン以外にも、たくさんの支出があります。食費、光熱費、通信費、車の維持費、保険料、子どもの教育費、趣味や旅行、将来のための貯蓄。長野県で暮らしていれば、車が一人一台必要になるご家庭も珍しくありません。こうした暮らし方の違いまでは、「借入可能額」という一つの数字だけでは判断できないのです。

大切なのは「いくら借りられるか」ではなく「毎月いくらなら無理なく安心して払えるか」

私がお客様と家づくりの話をするときに大切だと思っているのは、「いくらの家が建てられるでしょうか?」というところから始めるのではなく、

「住宅ローンを払いながら、どんな暮らしをしたいですか?」というところから考えることです。

たとえば同じ年収600万円のご家庭でも、家計はまったく違います。お子さんが3人いるご家庭と夫婦二人のご家庭。車のローンがあるご家庭とないご家庭。毎年家族旅行を楽しみにしているご家庭。子どもの教育にしっかりお金をかけたいご家庭。将来は早めに仕事を減らしていきたいと考えているご家庭。

同じ年収だからといって、同じ住宅ローンを組めるわけではありません。正確には、「組める」場合はあったとしても、同じ金額を無理なく返せるとは限らないということです。

家を建てたあとにも、お金は必要です

家づくりをしていると、どうしても「建てるまでのお金」に意識が向きます。しかし、本当に考えなければならないのは、むしろ家を建ててからです。住宅ローンは35年など長期間にわたって返済するケースがあります。

その間には、いろいろなことが起こります。子どもの進学、車の買い替え、家電の故障、家のメンテナンス、働き方の変化、親の介護。そして、自分たちの老後もやってきます。

住宅金融支援機構では、離職や病気などによって返済が難しくなった人を対象として、一定の条件のもとで返済期間を延長するなどの返済方法変更メニューも用意しています。返済期間を延ばせば毎月の返済額を減らせる一方、総返済額は増えると説明されています。

住宅ローンは、「今払えるか」だけではなく、10年後、20年後も無理なく付き合っていけるかという視点で考える必要があります。

家づくりの予算は「暮らし」から逆算する

では、予算はどうやって決めればいいのでしょうか。
私は、大きく次のような順番で考えるとわかりやすいと思います。

  1. 毎月の手取り収入を確認する
  2. 現在の生活費を把握する
  3. 教育費や車など将来必要になるお金を考える
  4. 貯蓄として残したい金額を考える
  5. 家を建てた後に必要になる税金や維持費も考える
  6. そのうえで、無理なく住宅に使える金額を決める

ここまで整理してから住宅ローンを考えます。

本当に家づくりにかけてもいい金額は、ファイナンシャルプランニング (生涯にわたるお金のシミュレーション) をしないとわからないのです。「借入可能額 → 家の予算」ではありません。順番は逆です。

「これからの暮らし → 無理のない住居費 → 住宅ローン → 家づくりの予算」です。

住宅ローンの余裕は、暮らしの余裕になる

家を建てるときは、どうしても夢が膨らみます。せっかくなら広いリビングにしたい。設備も良いものを入れたい。外構もしっかりつくりたい。その気持ちはよくわかります。

ただ、家は完成した瞬間がゴールではありません。そこで家族の暮らしが始まります。家を建てたことで、旅行に行けなくなった。子どものやりたいことを我慢させなければならなくなった。車の買い替えが負担になった。毎月住宅ローンのことばかり気になる。

それでは、何のために家を建てたのかわからなくなってしまいます。家は、家族の暮らしを豊かにするためのものです。

まとめ|銀行ではなく、自分たちの暮らしを基準に予算を決める

住宅ローンの借入可能額は、家づくりを考えるうえで参考になる数字です。しかし、それがそのまま「あなたの家づくりの適正予算」になるわけではありません。

金融機関が判断するのは、「いくらまで融資できるか」。
家族が考えなければならないのは、「いくらなら安心して返しながら、自分たちらしい暮らしを続けられるか」。
似ているようで、この二つはまったく違います。

私は建築に携わる立場として、家そのものだけでなく、その家で始まる暮らしまで考えることが大切だと思っています。大きな家を建てることが家づくりの成功ではありません。高価な設備を入れることでもありません。住宅ローンを払いながら、家族で食事をして、子どもの成長を楽しみ、ときには旅行に出かけ、将来に向けた貯蓄もできる。

そんな普通の毎日を安心して続けられること。

そのために、家づくりの最初にしっかり考えていただきたいのが「予算」です。住宅ローンの借入可能額を見て家の大きさを決めるのではなく、自分たちがこれから送りたい暮らしを考え、その暮らしを守れる金額から家づくりを始める。それが、長く幸せに暮らせる住まいをつくるための大切な第一歩だと、私は考えています。

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