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代表取締役 田中 慎也

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2026.09.06

「今建てるか、数年待つか」家づくりで考えておきたい“待つコスト”

こんにちは。
「長野に暮らす、長野と暮らす。」
田中建築株式会社 代表の田中慎也です。

家づくりの相談をしていると、よく聞かれることがあります。
「今は建築費が高いから、もう少し待ったほうがいいでしょうか?」

これは、とても難しい質問です。私自身、建築に携わる立場として「今すぐ建てたほうがいいですよ」と簡単に言うことはできません。数年待った結果、状況が良くなる可能性もありますし、反対に建築費や金利が上がる可能性もあります。将来のことは誰にも正確には分からないからです。

ただ、一つお伝えしたいのは、
「待つ」という選択にもコストがある
ということです。
今回は、「今建てるか、数年待つか」を考えるときに、私がお客様と一緒に確認したい数字について書いてみたいと思います。

「待てば家が安くなる」とは限らない

建築費については、「今は高いから、そのうち下がるのでは」と考える方もいらっしゃいます。もちろん、将来下がる可能性を否定することはできません。ただし、少なくとも「数年待てば安くなる」と決めつけられる状況でもありません。

国土交通省では、建設工事にかかる費用の動きを把握するため「建設工事費デフレーター」という統計を公表しています。建築や住宅についても継続的に指数が集計されています。

たとえば2026年3月の「建築総合」の指数は135.0で、前年同月より6.4ポイント高い水準でした。ただ、この数字を見て、「だから来年も上がる」とは言えません。

木材、設備機器、人件費、輸送費など、住宅価格を構成するものはたくさんあります。それぞれの価格がどう動くかを正確に予測することは難しいからです。

大切なのは、「建築費が下がるかもしれない」という一つの可能性だけで判断しないことだと思っています。

たとえば3年間待つと、家賃はいくらになるか

まず分かりやすいのが、今賃貸住宅に住んでいる場合の家賃です。

仮に、
家賃:月8万円、待つ期間:3年間として考えてみます。
8万円 ×12か月 ×3年 =288万円

月10万円なら、
10万円 ×12か月 ×3年 = 360万円になります

もちろん、家賃は単純に「損をしているお金」ではありません。その期間、住む場所を得ているわけですから、必要な住居費です。ただ、「3年待てば住宅価格が安くなるかもしれない」と考えるのであれば、その3年間に支払う住居費も一緒に計算したほうが公平です。

仮に3年後、希望する住宅が200万円安くなったとしても、その間に300万円近い家賃を支払っていたらどう考えるのか。逆に、実家などに住んでいて家賃負担がほとんどない方なら、「待つコスト」はかなり違ってきます。ここは家庭によって大きく変わります。

もう一つ大きいのが「住宅ローン金利」

そして、もう一つ考えておきたいのが金利です。
住宅は借入額が大きく、返済期間も長いため、わずかな金利差でも総返済額には影響します。

2026年9月現在、全期間固定型の「フラット35」では、返済期間21年以上35年以下の場合、最頻金利は年3.46%となっています。実際には住宅性能や家族構成などによる金利引下げ制度もあるため、適用される金利は条件によって異なります。

ここでは現在の商品金利とは切り離して、金利差の影響を見るための単純なモデルケースを考えてみます。

4,000万円を35年間、元利均等・ボーナス返済なしで借りたとします。
金利が年1.5%なら、毎月返済額は概算で約12万2000円。

年2.0%なら、約13万3000円です。その差は毎月約1万円。

35年間の利息総額で見ると、概算で、
年1.5%:約1,144万円
年2.0%:約1,565万円
となり、約421万円の差になります。

※概算。融資手数料、保証料、団体信用生命保険、各種優遇制度等は考慮していません。

つまり、仮に数年待って建築費が200万円下がったとしても、そのとき住宅ローン金利が上昇していれば、住宅にかかる総額では必ずしも安くなるとは限らないわけです。もちろん、その逆もあります。建築費が下がり、金利も下がる可能性だってあります。だからこそ、予想だけで判断するのが難しいのです。

「3年待つ」を数字にしてみる

そこで私がおすすめしたいのは、「今」と「3年後」を具体的に並べてみることです。

たとえば、現在家賃8万円の賃貸住宅に住んでいるご家庭なら、
3年間の家賃:約288万円です。ここに、3年後の建築費の変化と3年後の住宅ローン金利の変化が加わります。

考え方としては、
待って得られる可能性のある金額
- 待っている間に必要になる住居費
± 金利変化による返済額の差
を見るわけです。

たとえば「3年後に建築費が300万円下がる」という仮定だけを見ると、待ったほうが有利に感じます。しかし、その間の家賃が288万円なら、差はかなり小さくなります。さらに金利が上がって総返済額が増えれば、結果は逆転する可能性があります。一方で、現在の家賃負担が小さく、頭金を3年間でしっかり貯められるのであれば、待つことが家計にとってプラスになることもあります。

だから私は、「今か、待つか」を住宅価格だけでは判断しないほうがいいと考えています。

お金以外の「3年間」もあります

もう一つ、家づくりの現場で感じることがあります。それは、時間には金額では表せない価値もあるということです。たとえば、小さなお子さんがいるご家庭なら、
「子どもが小学生になるまでの3年間を、新しい家で過ごしたい」
という考え方があります。

反対に、「子どもの進学先が決まってから土地を考えたい」というご家庭もあります。どちらが正しいという話ではありません。

家は、単なる資産ではなく、家族が毎日の生活をする場所だからです。私たちが家づくりを考えるときも、住宅ローンの数字だけでなく、「その家で、いつから、どんな暮らしをしたいのか」ということは大切にしています。

私なら「3つの数字」を並べて考えます

「今建てるか、数年待つか」で迷ったら、私はまず次の3つを整理します。

① 待っている期間に支払う家賃
月々の家賃 × 待つ年数を計算します。

② 建築費が変化した場合の金額
「5%下がった場合」「変わらなかった場合」「5%上がった場合」など、複数のケースをつくります。

③ 金利が変化した場合の総返済額
現在より0.5%低くなった場合、変わらない場合、0.5%高くなった場合などを計算します。

この3つを並べると、
「待ったほうが得か、今建てたほうが得か」という二択ではなく、

自分たちの家計が、どのくらいの変化までなら無理なく対応できるのかが見えてきます。私は、こちらのほうが大切だと思っています。

「今が買い時です」とは言いたくありません

住宅業界にいると、「今が買い時です」という言葉を耳にすることがあります。でも私は、家を建てる時期について、一つの答えを押しつけるべきではないと思っています。

家族構成も違います。収入も違います。今払っている家賃も違います。土地を持っている方もいれば、これから探す方もいます。
そして何より、「どんな暮らしをしたいか」が違います。

ですから、
今建てることにもコストがある。
待つことにもコストがある。
その両方を数字にしたうえで、ご家族で判断することが大切です。

将来、住宅価格がどうなるのか。金利がどうなるのか。私にも分かりません。だからこそ、分からない未来を断定するのではなく、「こうなった場合にはどうなるか」を一つずつ計算しておく。

家づくりでは、そういう準備が安心につながると思っています。家は、建てること自体が目的ではありません。その家で家族が安心して暮らし、地域の中で生活を積み重ねていくことが本当の目的です。

「今建てるか、数年待つか」と迷ったときには、ぜひ住宅価格だけではなく、家賃・金利・建築費、そして家族にとっての時間まで並べて考えてみてください。その数字を見たうえで出した答えなら、「今建てる」も「待つ」も、どちらもそのご家族にとって意味のある選択だと私は思います。


参考資料

国土交通省「建設工事費デフレーター」
住宅金融支援機構「フラット35 金利情報」
日本銀行「貸出約定平均金利」

※掲載した住宅ローンの試算は金利差を説明するためのモデルケースです。実際の借入条件・適用金利・諸費用等は金融機関や住宅の条件によって異なります。また、将来の建築費や住宅ローン金利の動向を予測するものではありません。

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