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代表取締役 田中 慎也
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2026.07.30
熊本で再び震度7 「耐震等級3以外の家を建ててはいけない」理由とは?
こんにちは。
おかげさまで創業77年。
長野に暮らす、長野と暮らす。
田中建築株式会社 代表の田中慎也です。
2026年7月28日、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、宇城市と氷川町で最大震度7が観測されました。被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
今回の地震を受け、私は改めて、家づくりに携わる者として伝えなければならないことがあると感じています。
それは、これから新築する住宅については、耐震等級3を最低条件として考えるべきだということです。
耐震等級1は、数百年に一度程度発生する大きな地震に対して、建物が直ちに倒壊・崩壊しないことを想定した水準です。ここで大切なのは、「倒壊しない」という言葉が、地震の後もそのまま住み続けられることを意味しているわけではない、という点です。建物が大きく傾いたり、壁や接合部が損傷したりして、命は守られても、その後の生活を続けられなくなる可能性はあります。
耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の耐震性能 耐震等級は、住宅の地震に対する強さを三段階で表したものです。
耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍。
耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の地震力に耐えられることを想定しています。
耐震等級3は、災害時に活動拠点となる消防署や警察署などにも求められる、住宅性能表示制度上の最も高い等級です。
2016年熊本地震が示した耐震等級3の意味 耐震等級3の重要性を考えるうえで、2016年の熊本地震における建物被害は、非常に重要な資料となります。
2016年の熊本地震では、短い期間に震度7の揺れが2度観測されました。国土交通省の調査によると、調査対象となった住宅性能表示制度を利用した耐震等級3の木造住宅16棟のうち、14棟が無被害、残2棟も軽微または小破でした。割合にすると、87.5%が無被害です。国土交通省は、耐震等級3の住宅について、より多くの耐力壁が確保されていたことなどにより、高い耐震性が発揮されたと分析しています。
この数字は、耐震等級3であれば絶対に壊れない、という意味ではありません。 地震による被害は、揺れの大きさだけでなく、地盤、建物の形状、施工状態、擁壁、周辺環境など、さまざまな条件によって変わります。それでも、実際の大地震で確認された被害状況を見る限り、耐震等級3を確保することが、建物の損傷を抑えるうえで大きな意味を持つことは明らかです。 大地震は一度で終わるとは限りません 住宅の耐震性を考えるとき、忘れてはいけないのが、地震は一度の大きな揺れで終わるとは限らないということです。建物は、大きく揺れるたびに少しずつ損傷します。 1度目の地震に耐えたように見えても、柱と梁の接合部や耐力壁、金物などが傷み、その後の大きな揺れによって被害が拡大することがあります。2016年の熊本地震でも、最初の大きな揺れには耐えた建物が、その後のさらに強い揺れによって倒壊した事例が確認されました。
今回の地震についても、気象庁は、過去に大地震の発生後、同程度の地震が続発した事例があるとして、引き続き強い揺れに注意するよう呼びかけています。
私たちは、一回の地震だけに耐える家ではなく、繰り返す揺れも想定した家づくりを考えなければなりません。 その出発点が、耐震等級3です。命が助かった後の暮らしまで考える。耐震性能の目的は、何よりもまず人の命を守ることです。 しかし、家づくりに携わる者としては、命が助かった後の暮らしについても考えなければなりません。 住宅が大きく損傷し、住み続けることができなくなれば、避難生活が長期化する可能性があります。住宅ローンが残っている状態で、修理費用や建て替え費用、仮住まいの費用が必要になることもあります。地震保険にも限度があります。地震保険の保険金額は、原則として火災保険金額の30%から50%の範囲で設定され、建物は5000万円、家財は1000万円が上限です。 保険は大切な備えですが、失った住宅を同じ条件ですべて建て直せる制度とは限りません。だからこそ、保険だけを頼りにするのではなく、まず建物そのものの損傷をできる限り抑えることが重要です。
「耐震等級3相当」ではなく、根拠を確認する 家づくりを検討している方には、「耐震等級3」という言葉だけで判断せず、その性能をどのように確認しているかまで確かめていただきたいと思います。
特に注意したいのが、「耐震等級3」と「耐震等級3相当」の違いです。 耐震等級3は、設計住宅性能評価など、定められた手続きによって性能を確認したものです。一方、「耐震等級3相当」という表現は、第三者機関による評価を取得していない場合にも使われることがあります。
田中建築の過去の記事でも、次のようにお伝えしています。 「耐震等級3」と「耐震等級3相当」は同じではありません。 実際に地震保険の耐震等級割引を受けるためにも、所定の証明書類が必要です。耐震等級3の割引率は50%ですが、単に「相当」と説明されているだけでは、割引の対象にならない場合があります。
確認していただきたいのは、主に次の点です。 構造計算を行っているか 耐震等級3をどの方法で確認しているか 地盤や積雪荷重を適切に反映しているか 耐力壁の量だけでなく、配置のバランスも確認しているか 柱や梁、基礎、接合金物まで一体として検討しているか 設計どおりに現場で施工されているか 耐震性能は、壁を増やせばそれだけで確保できるものではありません。建物の形、重さ、吹き抜けや窓の配置、柱と梁の接合、基礎、地盤などを総合的に考える必要があります。
長野の家は積雪も含めて考える必要があります 私たちが家づくりをしている長野県では、地震だけでなく、地域によっては積雪荷重も考慮しなければなりません。屋根に雪が積もれば、建物は通常より重くなります。建物が重いほど、地震時に加わる力も大きくなります。そのため、雪の多い地域では、積雪を適切に見込んだうえで構造を検討することが大切です。 全国一律の考え方ではなく、その土地の気候や地盤、敷地条件まで含めて設計する。これが地域の工務店に求められる役割だと私は考えています。
耐震等級3は特別な仕様ではなく、家づくりの出発点
私は、耐震等級3をぜいたくな追加仕様だとは考えていません。住宅設備や内装は、暮らしながら交換したり、改修したりすることができます。しかし、基礎や柱、梁、耐力壁といった建物の骨組みを、完成後に根本から強くすることは簡単ではありません。多額の費用が必要になり、間取りや仕上げにも大きな影響が出ます。 だからこそ、最初の設計段階で安全性を優先しなければなりません。予算に限りがある場合でも、耐震性能を下げて設備や見た目を優先するのではなく、まず構造の安全性を確保し、その範囲内で家全体を整えていくべきだと思います。 余力があれば制震ダンパーを取り付けることもお勧めしています。
まとめ――家族の命と、その後の生活を守るために
今回、熊本で再び震度7の地震が発生しました。地震が起きるたびに、私たちは自然の力の大きさを思い知らされます。そして、地震がいつ、どこで起きるかを正確に予測することはできません。だからこそ、これから建てる家については、分かっている危険に対して、できる限りの備えをしておく必要があります。 耐震等級3であっても、あらゆる地震に対して無傷を保証できるわけではありません。地盤や施工、建物形状なども含めた総合的な検討が必要です。
それでも、耐震等級3を確保することは、家族の命を守り、地震後の暮らしを守るための、最も基本的で現実的な備えの一つです。
田中建築では、これまでも次のようにお伝えしてきました。
「これから建てる家は耐震等級3以外のものは建てない」
これは営業上の言葉ではありません。家をお引き渡しした後も、そのご家族の暮らしは何十年と続きます。その責任を考えれば、安全性について安易な妥協をすることはできない、という私たちの姿勢です。 建築を通して人と地域の幸せをつくる。そのためには、まず命が守られ、災害の後も生活を立て直せる家をつくることが必要です。私はこれからも、耐震等級3を家づくりの最低条件として、設計と施工の両面から、誠実に向き合っていきたいと思います。
参考・出典
気象庁「令和8年7月28日16時27分頃の熊本県熊本地方の地震について」
気象庁「令和8年熊本地震について(第3報)」 国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 報告書」
田中建築株式会社 ブログ 「耐震等級3以外の住宅は建ててはいけません!」
田中建築株式会社 ブログ 「地震に備える 知っているようで知らない耐震等級のこと」
田中建築株式会社 ブログ 『耐震等級3』と『耐震等級3相当』の違いって?
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