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代表取締役 田中 慎也
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2026.10.08
希望通りの間取りなのに、構造的には難しい? 家づくりで知っておきたい1階と2階の関係
こんにちは。
「長野に暮らす、長野と暮らす。」
田中建築株式会社 代表の田中慎也です。
家づくりを考え始めると、多くの方が最初に思い描くのが「間取り」ではないでしょうか。
広いリビングが欲しい。家事がしやすい動線にしたい。収納をたくさん設けたい。子ども部屋はこの位置にしたい。
最近では、インターネットやSNSなどでさまざまな間取りを見ることができ、お客様ご自身で間取りを考えてこられることもあります。ご家族の暮らしを真剣に考えた間取りには、私たちも参考になることがたくさんあります。
ただ、建築の専門家として図面を拝見すると、気になることがあります。
それは、一見すると希望通りにまとまっている間取りでも、建物の構造という視点では、十分に検討されていない場合があるということです。
今回は、特に木造2階建て住宅における、1階と2階の構造の関係についてお話ししたいと思います。
1,間取りは1階と2階を別々に考えてはいけない
間取りを考えるとき、どうしても1階は1階、2階は2階と、それぞれの使いやすさを優先してしまいがちです。
例えば1階では、広々としたLDKをつくりたいので、できるだけ柱や壁を少なくしたい。一方、2階では、子ども部屋や寝室、収納を使いやすく配置したい。
それぞれの階だけを見ると、よく考えられた間取りに見えるかもしれません。しかし、建物は1階と2階が別々に存在しているわけではありません。屋根や2階にかかる重さは、梁や柱、壁などを通して下の階へ伝わり、最終的には基礎、地盤へと伝えられます。地震や風の力に対しても、建物全体で安全性を確保する必要があります。
そのため、1階と2階の柱や壁がどのようにつながり、力を伝えているかが、とても重要になります。
2, よくある事例:1階は広いLDK、2階は細かく仕切られた個室


例えば、こんな間取りがあるとします。
1階は広いLDKを中心に、できるだけ間仕切り壁を少なくした間取り。2階には寝室、子ども部屋、収納などが配置され、それぞれの部屋を仕切る壁がたくさんあります。間取りとしては、ご家族の希望がよく反映されています。
しかし、1階と2階の図面を重ねてみると、2階の壁の下に1階の壁や柱がない部分がいくつも見られます。もちろん、2階の壁の真下に必ず2階の壁が必要というわけではありません。梁などによって荷重を適切に伝える設計も可能です。
ただし、そのためには梁の大きさやたわみ、柱への荷重の集中など、さまざまな検討が必要になります。単に「間取りとして成立している」ことと、「構造として適切に成立している」ことは、同じではないのです。
3,1階と2階の壁を重ねてみると、問題が見えてくる

私が間取りを確認するときに大切にしているのは、各階を別々に見るだけでなく、建物全体として確認することです。特に注目するのが、柱や壁の位置、そして上下階の力の伝わり方です。
2階の柱や壁が、1階のどの部分で支えられているのか。大きな空間の上に、重い荷重が集中していないか。地震の力に抵抗する壁が、各階で適切に配置されているか。こうした点を確認していきます。
ここで知っていただきたいのが「直下率」という考え方です。
直下率とは、簡単に言えば、2階の柱や壁の位置に対して、その真下の1階に柱や壁がどれくらいあるかを示す指標です。柱の直下率と壁の直下率があり、上下階の構造のつながりを確認する一つの目安になります。
ただし、直下率が高ければ必ず安全、低ければ危険という単純なものではありません。壁の強さや配置、梁の設計、接合部、基礎などを含めた構造検討が必要です。
私が伝えたいのは、間取りを考える段階から、上下階の構造を意識することが大切だということです。
4,構造を考えずに間取りを決めると、どうなるのか
では、1階と2階の構造が十分に整理されていない間取りでは、どのようなことが起こるのでしょうか。
まず、荷重を支えるために大きな梁が必要になる場合があります。梁が大きくなることで、天井の高さや設備配管の計画に影響が出ることもあります。また、柱や梁の補強、接合部の検討などによって、当初の想定より構造に関わる費用が増える可能性もあります。
そして、構造計算を進める中で、壁や柱の追加、間取りの変更が必要になる場合もあります。もちろん、適切に構造設計を行えば、上下階の壁が一致しない間取りでも成立させられることはあります。大切なのは、希望する間取りを実現するために、どのような構造が必要なのかを早い段階で確認することです。
5, 構造を整理することで、間取りがより良くなることもある
構造を考えるというと、間取りの自由度がなくなるように感じられるかもしれません。しかし、私は必ずしもそうではないと考えています。例えば、2階の間仕切り壁の位置を少し調整することで、1階の柱や壁との関係を整理できる場合があります。
また、収納や廊下の配置を工夫することで、必要な構造壁を暮らしの中に自然に取り込めることもあります。
大切なのは、お客様がなぜその間取りを希望されているのかを理解することです。広いリビングが欲しい理由は、家族がゆったり過ごすためなのか。柱をなくしたい理由は、家具を自由に配置したいからなのか。
その目的が分かれば、必ずしも最初に描いた間取りの形だけにこだわる必要はありません。暮らしの希望をできるだけ守りながら、構造的にも無理の少ない計画を探していく。そこに、住宅設計の大切な役割があると思っています。
6, 家づくりは、間取りと構造を同時に考えることが大切
現在の木造住宅では、建物の規模や仕様に応じて、法律で定められた構造安全性の確認が必要です。2025年4月からは建築基準法の改正により、木造住宅の構造関係規定や建築確認手続きにも変更がありました。
こうした制度への対応はもちろん必要ですが、私は法律の基準を確認することだけでなく、設計の初期段階から合理的な構造を考えることも大切だと思っています。間取りが完成してから構造を検討し、後になって大きな変更が必要になる。そうしたことをできるだけ避けるためにも、計画の初めから間取りと構造を一緒に考えていくことが重要です。
まとめ:良い間取りは、見えない部分まで考えられている
家づくりでは、どうしても部屋の広さや配置、生活動線など、目に見える部分に意識が向きます。もちろん、それらは毎日の暮らしに直結する大切な要素です。しかし、住宅は完成すると見えなくなる柱や梁、壁、接合部などによって支えられています。
だからこそ私は、「希望通りの間取りができたか」だけでなく、「その間取りをどのような構造で支えるのか」まで考えることが大切だと思っています。
お客様がご自身で間取りを考えることは、家族の暮らしを見つめ直す、とても良い機会です。その思いを大切にしながら、構造的な裏付けを持った住まいへと整えていくことが、私たち建築に携わる者の仕事です。見た目の間取りだけでは分からない部分にも目を向けること。それが、長く安心して暮らせる住まいづくりにつながると考えています。
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