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宮沢 正史

まごころサポート事業部 部長

過酷な人命救助の現場を経験し、見つめ直した人生。高齢者の暮らしを支えるやりがいのある仕事へ

田中建築では2025年4月に、新事業部である「まごころサポート事業部」が立ち上がりました。高齢者の暮らしをお手伝いする事業に取り組み、電球の交換や家の掃除など、日常生活で発生するちょっとした困りごとから「旅行に行きたい」といった希望まで、「コンシェルジュ」と呼ばれる地域スタッフがサポートします。全国220カ所で展開されているサービスで、私は部長として、まずは取り組みの周知と実際の支援に取り組んでいきたいと考えています。

そもそも私の前職は、長野市消防局での消防吏員(消防士)でした。勤務歴は30年。火事の際に消火活動を行う消防隊員だけでなく、はしご車やクレーン車といった特殊車両の資格も取得し、火災現場では真っ先に火の中に飛び込んで人がいるかを判断する救助隊員も経験しました。

さらに消防学校の教官も務め、入職20年目には夢だった長野県消防防災航空隊員に着任。県内13の消防本部などから選抜された8名のみが派遣される人命救助のプロフェッショナル集団で、高山での山岳遭難救助も行う日本一過酷な現場ともいわれるなか、湖や川での潜水訓練や雪山訓練など厳しい訓練を重ねました。雪崩の発生現場では助けられなかった命もあるなど、自分の力ではどうしようもない経験もしましたが、生きるか死ぬかの現場で3年間の任期を全うしました。

そんな過酷な業務から一線を退き、次に任されたのが総務課での事務職です。これまでと全く異なる仕事内容で、魂が抜けたような気持ちにもなり、徐々に消防士をやり尽くした感を抱くように。さらに卒隊の翌年には、なんと長野県の防災ヘリコプターの墜落事故が発生。一緒に人命救助に尽くしてきた仲間の消防隊員ら9名が犠牲になり、「まさか」と信じられない思いで、次第に自分の人生を見つめ直し、これからの仕事を考えるようになりました。

「今後もずっとこの仕事のスタイルでいいのだろうか。今の事務職は自分がいなくても回るだろう。もっと親身になってピンポイントで人に寄り添い、地域や社会に貢献できる仕事はないだろうか」

そんなときに知ったのが、地元の同級生である友人が長野市内で立ち上げた、高齢者の暮らしをお手伝いする「まごころサポート」の事業でした。友人に話を聞くと「感謝される仕事であり、やりがいがある」と言います。うらやましく思うと同時に思い出したのが、消防士になったばかりの頃の記憶でした。

当時は火災予防のために高齢者宅を訪問し、キッチン周りを確認したり、緊急時の連絡先を聞いていたりしたのです。奇しくも私の初任地は飯綱町の鳥居川消防署。時代の流れに伴い、個人情報の取り扱いが厳しくなって訪問することはなくなりましたが、当時から「跡を継ぐ子どもがいないが、将来的に家や土地を何とかしたい」といった相談を高齢者から受けていたことが思い出されました。

加えて、大きな心境の変化になったのが、母の病気が発覚し、3カ月ほどで他界してしまったことです。何もしてあげられなかったという思いが強く、精神的にきつかったことで、より今後の人生を見つめるようになりました。

「高齢者はいつ容体が急変するかはわからない。未来を背負う子どもたちを支える事業ももちろん重要だが、今までそれぞれの人生を頑張ってきた高齢者の役に立つような仕事をしてもよいのではないだろうか」

救急の現場では、誰にも看取られずに孤独死をしていた数々の独居高齢者も見てきました。徐々に高齢者を支えたい思いに駆られるようになり、さまざまな高齢者支援の取り組みについて調べるように。どの事業もいまいちしっくりこない一方で、友人が取り組む「まごころサポート」は、友人自身が楽しそうに仕事をしていることに加え、単に高齢者の暮らしをお手伝いするだけでなく、Wi-Fiを使って各自の生活リズムや日々の活動を把握でき、緊急時にはボタンひとつで駆けつけることもできます。富山県では地域ぐるみでこの「まごころサポート」に取り組んでいるなど、行政レベルで導入されていて、目の届かない支援体制が整っているので離れて暮らす家族も安心できる点が魅力でした。

「私も『まごころサポート』に携わりたい」

そんな思いを友人に伝えると、ちょうど飯綱町で同事業を立ち上げようとしている人がいると紹介されたのが、私と同年代である田中建築の田中社長だったのです。

「40代後半のこの歳になると、なんとなく今までの人生を振り返り、この先の仕事をどうしようか、今やっている仕事が本当に自分のやりたかったことか、もう一度全力投球をして魂を込めてできる仕事に取り組めるかと考えるんです」

そう話す社長は、昔、田中建築で家づくりをしたご近所の高齢者が一人暮らしになっていることに対し、何かお手伝いをしたいと長年思っていたそうです。探してたどり着いたのが、私の同級生が取り組む「まごころサポート」だったとのこと。ご縁を感じました。

「今までお世話になった地域の方に恩返しをしたいという社長の力になれたら」

社長の芯がある思いだけでなく、人柄や真面目さにも触れ、私は消防士の退職を決意。家族からは強く反対されましたが、半ば押し切り、社長と約1年間の準備を進め、このたび、ようやく田中建築で「まごころサポート事業部」が立ち上がりました。

今はまず、飯綱町内や周辺地域で取り組みの周知を図りつつ、ケアマネジャーとも連携して高齢者の困りごとを把握し、長野市の私の友人や千曲市で同様に取り組む事業者とともに、加盟店3社で協力しながら事業を進めていきたいと考えています。

また、この事業を田中建築で取り組む強みは、高齢者のご自宅を訪問し、段差などの危険箇所があれば改修もできること。そのうえで、私自身が緊急時の対応もしてきた元消防士であるほか、すでに看護師の有資格者がコンシェルジュの仲間入りをしています。今後はさらに定年退職をした消防士仲間にも声をかけ、コンシェルジュの人数を増やしていく予定です。ちなみに、私は前職で総務課にいた頃には、建物の改修や水漏れ対応、電球交換、敷地内の剪定なども担当していました。その経験も生かしたいと考えています。

目標は知名度を高め、一人で悩んでいる高齢者の心配事を取り除くこと。まずは「ご近所さんと買い物に出かけたい」「病院への通院に付き添ってほしい」など、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。「困ったことがあれば、最初に田中建築のまごころサポート事業部に電話しよう」と思っていただけるようになることが一番の展望です。

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